2011/12/20

「アンダーグラウンド」感想②

前後しますが個別のインタビューの感想。

多くの人は自分が将来出くわすであろう多くの事象について、自分の属する集団の[平均値]や[マジョリティーにあてはまる未来]等々に基づいた想定を(意識的or無意識的に)行っています。

例えば「日本の20代会社員男子」という集団に属する人が老後について語る時、大抵暗黙の内に70代後半~80歳前後まで生きることが想定されていますし、「進学校の高校生」という集団に属する人が進路について語る時、それは大抵<大学進学>という前提の中でどのような大学・学部を目指すかの話になります。

属している集団の規模が小さくなる程その想定はより強固なものとなります、例えば高校生全体という集団での大学進学率は50%に満たず、大学進学というのがマイノリティーだという事実に対して往々にして盲目になりがちなのだと思います。

そして、属している集団を限りなく小さくした場合(最小値は自分一人)、家族に起こったり、実際に自分の身に起こった外れ値的な問題についてはようやく「そうした事もありえる」と気付く。父親が解雇されて突如進学できなくなり高卒で就職を余儀なくされる、等々。

また、属している集団においてなされていた想定がいきなりひっくり返るケースもあります。直下型大地震を想定していなかった阪神地域など。

この外れ値的な事象、あるいは極めて小さなマイノリティーにのみ襲い掛かる事象、これらに私達は基本的に気付きにくいようです。という事に気付けるのが本書だと思います。


この本で扱われているような大きな事件であっても、多くの一次情報は(本書で多くのインタビュイーが悪質と語る)マスコミによる悪質なフィルターを通してしか知ることができないため、大概非常に歪曲された形で知ることになります。しかしこの本の場合、村上氏という(恐らく比較的)良質なフィルターを通して知ることができる、この点に私は本書の大きな価値があると考えます。

本書において、著者はあえて各インタビュイーが事件までどんな仕事をし、生活をし、趣味を持ち、人生を歩んできたかを尋ねています。そのような一本一本の線が事件当日のある一点において交差することで当日の状況が立体的に浮かび上がります。どちらも、特に前者はマスコミにおいては切捨てられる事が多い部分です。

この各インタビューを読み進める過程を通じて、私は「外れ値的な事象」が、実は誰にも―自分にも―起こりうるということ、自分の属する集団が持つ想定がいかに脆弱かということ、そうした事を考えました。人生設計等の場面ではこのような想定はしばしば有用かとは思いますが、時々「外れ値に入る想定」にも思いをめぐらす必要があるのでしょう。

なにより、自分が外れ値になりうるという覚悟を持てば、流れる時間をもっと大切にできるのではないでしょうか。

追、インタビュアーとしての著者の力量は私程度では判断しかねますが、少なくともこの人だからこそ聞けた話もあると思います(知名度、世間イメージなど)。

1 件のコメント:

  1. 非常に興味深い内容で、関心を持って読ませていただきました。まずは、この本の内容そのものに強い関心があるのでこんど、かしてください。

    書評を読んで感じたことは、外れ値的な事象に出くわした際に、その外れ値を自分のこれまでの人生設計上にうまく乗せることができるか、もしくは、外れ値を起点として人生を歩み始められるかどうかで、その後の人生って変わってくるんだろうなぁと感じました。外れ値がくることはある意味では必然で、(予定調和的な人生は実際はあまり多くないので)そこからが大事ですね。

    そのためには立ち向かうことが必要だと思います。いまの自分は結局は逃げていることに改めて気付かされました。立ち向かうことでしか、成し得ないことがある。。

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