2018/11/22

インハウスリクルーターとエージェント(External Recruiter)の違い

インハウスリクルーターとエージェント、共通する部分も多いが異なる部分も多い。

私が最も異なると感じるのは、インハウスの方が何を正しい/正しくないとするか、その価値観の軸がインハウスはより複雑でエージェントの方がシンプルだということ。

同じ採用に関わる仕事でも、エージェントはフロントオフィスの仕事である。フロントであるからには基本的に会社にとってプラスで、顧客にとってプラスでもあれば良い。この2軸の座標軸上で右上を目指せば基本的には正しい。しばしばこの2軸の間でコンフリクトを起こすこともあるが、通常高い顧客満足は売上につながる。もっと言えば、顧客満足を置いてけぼりにしていたとしても売上・利益が上がっていれば正義とする会社もある。この場合はより一層シンプルである。

一方インハウスはバックオフィスの仕事だ。採用はその中でも定量管理のしやすい仕事ではあるが、価値観の軸はより複雑になる。例えばマーケティング部門のHiring managerがシンガポールにあるAPAC HQのシンガポール人で、ローカルのマーケマネージャーを採用しようとしているとする。ここで、

・Hiring managerは、将来自分の立場を脅かされることを恐れ、弱い人材を採用したいと思っている
・ローカルのHRディレクターはそれでは日本にとって良くならないので、より強い人材を採るべきだと考えており、グローバルマーケティングのより上層部に働きかけている。ただしこの根回しには少し時間がかかりそうだ
・ローカルのマーケチームの既存スタッフは人員不足で疲弊していて、誰でもいいので一刻も早く採用してほしいと思っている。また採用の遅れによる機会損失も生まれつつある
・あなたの評価は360度評価で決まり、HRディレクターもHiring managerも評価者になるが、影響力はHRディレクター>Hring manaerである

というような状況の時、どうするのが正しいのか?

一つの考え方は自分の評価が最大になるように動く。結局正解はないのだから、これはある意味正しい。もう一つの考え方は、自分が会社全体にとってもっとも正しいと信じる選択をする。その選択が実際に正しい結果を有無には、適切な信念を作り上げられるだけの勉強が必要になるし、コンフリクトを乗り越えるコミュニケーションが必要になる。なぜなら、人事モノでのコンフリクトは多くの場合価値観の不一致から発生するからだ。また、信念に則って行動したからといって、それが評価に結びつくとも限らない。

最終的に会社のプロフィットに結びつくことが正しいという点ではフロントもバックも変わりないのだが、フロントは顧客に近い分、利益を出すための方程式が短く、変数も少ない。バックだと間接部門の名の通りビジネスへの影響は間接的なものだから、選択肢Aと選択肢B、どちらがよりビジネス的に正しい選択肢かを正確に予測するのは不可能である。

こういう曖昧さ(Ambiguity)を受け入れられるかどうかは、インハウスリクルーターに向いているかどうかを大きく左右する。逆にエージェントなら数字を追いかけること自体にドライブされるタイプでないと厳しい。これは結構性格的な面が大きいと思われる。