夏休みに遅ればせながら映画「この世界の片隅に」を見た。とても感動して、原作漫画も買って読んだのでその感想。
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■繰り返して読む度に、複雑な感情が湧き上がる作品。玉音放送にあるような耐え難きを耐え忍び難きを忍ぶような時代の続きに今の時代はあるわけで(たとえそういうタフな時期が朝鮮戦争特需なり冷戦なりで短縮されたにしても)、それに対する感謝の感情が半分。この国をもっと良くできるようにしなきゃと思えてくる。
■もう半分は、当時なぜ戦争なんて始めてしまったのか、そしてなぜ今もなお敗戦国としての誹りを免れないのか、それは当時の日本人、自らの先祖達のせいなんじゃないかという気持ち。戦前少なくとも一度は民主主義を実現していたわけで、当時の選択の過ちは誰か個人の過ちではなく日本人全体が間違いを重ねていった結果というのがまた救いがない。
■主人公が「暴力で従えとった」「この国の正体」を理解した瞬間に崩れおちたのは、いつの間にか(望むと望まざるとに関わらず)自らも戦争に対する参加意識が芽生えてしまっていたがため。この作品が面白いのは、その瞬間まで主人公が戦争に対する嫌悪感をあらわにするような描写がないこと。実際、前向きな主人公はその前向きさゆえに戦争のある日常を受容して日々を暮らしていく。ここには明るく前向きな普通の人間が、特に積極的な支持を表明したとかではなくても気がつけば戦争という大きな流れになんとなく飲み込まれてしまう恐ろしさがある。